三谷幸喜監督作品「みんなのいえ」。
この「家づくり」をテーマにした映画、誇張されている部分が
多々ありますが、現代の家づくりの核心を突いているのです。
どのような部分かといいますと・・・
まずは、設計者であるデザイナーと職人肌の大工の衝突をバックに、
彼らに翻弄されて、ほとんど意見の言えない建て主(住まい手)の
存在です。
このシチュエーションはあまりにコテコテですが、
現代の建て主が「家づくり」に振り回されているのは間違いありません。
「材料や工法などの情報の氾濫」、「住宅メーカーなどビルダーの増加」、
「何千万円という家づくりに掛かる非日常的な金額」などなど、
建て主が翻弄される要因は多数あり、その中で本当に自分らしい
家づくりを行うことは至難の業と言えます。
このような状況の中で、私達設計者は、建て主がその人らしい家づくりを
できるよう導いていかなくてはなりません。
建て主とその生活に対する「観察力と想像力」、
そして適切な「情報処理能力」、
これが住宅設計者に求められる最も重要なものなのでしょう。
もう1つは、「当たり前のものがこの国にはなさすぎる」
というデザイナーの嘆きです。
これには全くもって同感で、量産化・工業化・ノンクレーム主義の下に、
当たり前だった材料、当たり前だった技術が、当たり前に使えない
世の中になってしまいました・・・。
これは、本当の意味で住まい手のことを考えず、
住宅を提供する側(施工する側)の都合を一方的に押し付けた結果です。
また、物事に対して真の価値・真の豊かさを求めず、目先の損得・利便性
にはしる建て主(住まい手)にも責任の一端はあります。
何だか小難しい話になってしまいましたね(笑)
私は住宅設計という仕事を通して、
建て主が、本当の意味で豊かな生活を送ることができるイエ
設計者が、建て主と施工者と心を通わせてつくり上げたイエ
各職人達が、自分の仕事を誇れるイエ
みんなが幸せになれる「みんなのいえ」
そんな「みんなのいえ」を1つでも多く残していきたいと思っているのです。