私の設計という仕事は、当然のことながらクライアントの
予算内におさまるものとしなければなりません。
しかしながら、設計中はクライアント自身も
どんどん夢が膨らみ、設備機器や仕上げ材料の
グレードが上がったり、面積が増えたりしていくものです。
予算オーバーだと思いますよ・・・と言いつつも
こちらも何とか実現させてあげたいという思いで、
何とか工夫してそれらを盛り込むのですが、
建設会社から見積りを取ってみると
しっかりオーバー・・・というのはよくあること。
事前に概算見積りをたてていても、
ナカナカその通りにはいかないものです。
何しろ私が設計している住宅は、
一品生産の完全オリジナル住宅であり、
建築というのは『時価』ですからねぇ・・・
こんな時ほど、住宅メーカー方式が
羨ましく思える時はありませんが(^_^;)
しかし、それは私のモノノツクリカタに
反しますので・・・
ということで、クライアントと話し合い、
減額できる要素を探す作業が始まります。
私はここからが本当の意味での設計作業と言いますか、
非常に重要な作業だと思っております。
大元にあるコンセプトが崩れてしまうような
ことにはならないように、設計者は専門家として、
適切に慎重にクライアントの取捨選択を導くことが
大切です。
これはクライアントにとっては非常に辛い作業です。
諦めなければいけないことを決めるわけですから、
その心痛はこちらにビシビシ伝わってきます・・・
しかし、設計者の視点で言いますと、この作業によって
住宅が本当にその住まい手らしいものとして
洗練されていく気がするのです。
辛いこと楽しいことを乗り越えて、その住宅は
本当の意味で住まい手のものであると言える
ものになっていくのです。
そこには、簡単に手に入れてしまった人には得られない、
特別の充実感があるのだと断言できます!