家を建てるという行為は、決して設計者だけのものではありません。お施主さんの思い、大工さんや左官職人の技、電気や水道の職人の知恵──それらが有機的に関わりあいながら、ひとつの住まいが生まれていきます。だからこそ私は「分離発注方式」という仕組みにこだわってきました。

これは、工務店を介さず、設計者とお施主さんが職人ひとりひとりと直接契約する仕組み。最初は少し手間に感じるかもしれませんが、職人の顔が見え、声が届くというのは、家づくりにとってかけがえのない価値になります。
例えば、現場でお施主さんと左官職人が話をして、その場で壁の仕上げ方が決まることもある。あるいは、大工さんが「こうすると使いやすいですよ」と提案してくれることもある。設計図だけでは見えない、現場での“やりとり”が住まいに命を吹き込むのです。

信頼を重ねながら、一棟ずつ丁寧につくる。時間も手間もかかりますが、そのプロセスこそが、住まいに深みを与えてくれると信じています。家は人の手から生まれるもの。その当たり前を、これからも大切にしたいと思います。