私が木を好んで使うのは、ただ素材として美しいからではありません。木には、声があると思うのです。音ではなく、存在としての静かな声。その家にふさわしい樹種、寸法、肌触り。一本一本が「ここにいたい」と言ってくるような感覚があります。

無垢材には、均一ではない表情や節がありますが、そこに人の手が重なることで、時間が染み込み、やがて家族の記憶になっていきます。素材と向き合う時間は、設計の中でもとても大切なプロセスです。

図面の中では線でしかないものが、現場で木になり、空間の中で呼吸を始める。そんな瞬間が、私はとても好きです。
