図面を描くとき、私は目だけでなく耳も使っています。たとえば、キッチンでまな板を叩く音、子どもが階段をかけ上がる足音、雨が屋根を打つリズム。暮らしには、たくさんの音があふれています。
音の抜け方、響き方によって、その家の印象は大きく変わります。壁の素材や天井の高さひとつで、音がやさしくなったり、にぎやかに感じたり。
静けさを求める空間もあれば、家族の気配を感じたい空間もある。音の設計は、図面では表現しにくいけれど、とても大切な要素です。
完成した住まいで、その家独自の音風景を耳にしたとき、「ああ、うまくいったな」と思うことがあります。そんな瞬間が、建築を続ける励みになります。